燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

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稲荷山その27:玉姫社と毎日稲荷社

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<2022年7月 記事内容改訂>

はじめに

今回は玉姫のエリアについて。
今までの稲荷山の記事はこちら

マップは以下の通り。
番号が振ってあるのは、お塚の台座の番号だ。
(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)

玉姫


三ツ辻から熊鷹社方面や四ツ辻方面へ行かずにもう一方の道を進むと、よくWEB等では「裏参道」と呼ばれている御産場稲荷方面に抜けることができる。
その裏参道の、三ツ辻から来て最初に至るのが玉姫というエリアだ。

白髭大神・𠮷照大神・眼力大神



このお塚には3柱が祀られている。
白髭大神は猿田彦大神の別名ともされており、その猿田彦大神伏見稲荷大社本殿に祀られる佐田彦大神の別名とされている。
𠮷照大神は詳細不明。
眼力大神は眼力社の御祭神として有名だ。
この中では眼力大神だけ神名が金色で塗られていたり幟が立ったりしているので、恐らくこのお塚のメインの御祭神なのだろう。


なお、2016年3月に参拝した際は上記の写真の通り、眼力大神は金字にはなっていなかった。

德丸大明神


先述の金色の眼力大神のお塚の向いには、德丸大明神のお塚が鎮座している。



ここのお塚には珍しいことに「おもかる石」が設置されている(このおもかる石は徳丸大明神の御神体なので、持ち上げる時は丁重に扱う必要がある)。
稲荷山にあるおもかる石は、自分が把握している限りだと此処と奥社奉拝所裏伏見神宝神社境内の3ヶ所に存在している(無論、自分が知らないだけで他にもある可能性はある)。

開運稲荷大神


德丸大明神の左側には開運稲荷大神が祀られている。
いかにも縁起が良さそうな神名だったので、開運を願って参拝した。

松尾社


開運稲荷大神の2つ左隣りには、松尾大神を祀る松尾社が鎮座している。
この松尾大神が嵐山の松尾大社と関連があるのかは分からなかった。

なお稲荷山の茶店で売られている『伏見稲荷大社 大祓御神徳記』(以下、『大祓御神徳記』)に収録されている大正〜昭和頃の「伏見稲荷山参拝図」にも、「松尾社」の名称で記載されている*1

玉劔社


ここは玉劔社と呼ばれる社だ。
玉五郎大神・玉劔大神のお塚を初めとして、数多くのお塚が祀られている。

天光正一位玉五郎大神・天光正一位玉劔大神


このお塚が玉五郎大神と玉劔大神を祀るお塚だ。
一番上に天光正一位とあるが、これは玉五郎大神と玉劔大神のどちらにも冠されているのだろう。

眞向不動明王


玉劔社内、入って右側には眞向不動明王が鎮座している。
両脇に祀られているのは不動明王の眷属で、脇侍として祀られることが多い矜羯羅童子と制咜迦童子だろうか。

身代わり地蔵尊



玉劔社の入って左側には身代わり地蔵尊も祀られている。
横のお守りの掲示を見る限り、子供や妊婦を守護する地蔵尊であるようだ。

玉姫社


玉劔社の横の玉姫社は、玉姫大神を祀る。
このエリアの名前の由来もここに因ると思われる。
姫大神は良縁の神であり、恋愛だけでなく商売における縁結びの神としても信仰されている*2
『大祓御神徳記』にも「玉姫社」として記載あり*3

なお『伏見稲荷神社御山独案内』(以下、『御山独案内』)では「玉姫明神」の名で記載されている*4

天之御中主天國大神 外4柱



ここは出雲大社教の崇敬者が建てた祠で、宇迦之魂佐田彦大神・大國主之大神・天之御中主天國大神・長者合槌御釼大神・末廣稲荷大神の5柱を祀る。

宇迦之魂佐田彦大神は、伏見稲荷大社本殿に祀られる宇迦之御魂大神佐田彦大神のことだろう。
大國主之大神は出雲大社主祭神であり、荒神峰田中社神蹟に祀られる権太夫大神の別名とされている。
天之御中主天國大神は天之御中主神のことだろうが、天国がどういう意味で神名に冠されているかは不明だ。
長者合槌御釼大神は、長者社神蹟御劔社に祀られる賀茂玉依姫命のことかもしれない。
末廣稲荷大神一ノ峰上社神蹟に祀られる末広大神だろう。

歡喜稲荷大神


このお塚には歡喜稲荷大神が祀られている。
由来不明ながら、神名からし歓喜天稲荷大神が習合しているのかもしれない。

鞍馬大王・笹冨良大神・三寳荒神


このお塚には3柱が祀られている。
鞍馬大王は御幸辺二ノ峰で「鞍馬大僧正」の名で祀られていたのと同じく、鞍馬山鞍馬天狗のことだろう。
笹冨良大神は詳細不明。
三寳荒神は元々仏教の神で、家などで竈神として祀られることが多い神だ。

正一位白雲白狐山村重稲荷大明神


このお塚はとにかく神名が長い。
名前は「正一位 / 白雲白狐山 / 村重稲荷大明神」で区切って考えれば良いものと思われる。
扁額を見るに「村重大明神」が通称か。


なお調べてみると、兵庫県小野市に白雲白狐山村重大明神の社があることが分かった。
もしかするとこのお塚と何か関係があるのかもしれない。

小丸居神社



玉姫社の真裏には小丸居神社が鎮座している。
ここには小丸居神社・由加神社・浮島之大神の3つのお塚が祀られている。


小丸居神社は広島県竹原市に同名の神社があるので、そこの関連かもしれない。


由加神社も岡山県倉敷市に同名の神社があるので、その関連だろうか。

浮島之大神については、浮島神社というのは複数存在するようなので詳細は分からなかった。

白狐社



玉姫社の隣は白狐大神を祀る白狐社だ。
扁額を見る限り口入大神も祀られているようだが、鳥居の量に圧倒されて見えなかった。

『大祓御神徳記』には「白狐社」として記載*5、『伏見稲荷神社御山独案内』では「白狐明神」の名で記載されている*6

道通大神


ここは道通大神を祀る祠だ。


岡山県笠岡市には猿田彦大神を御祭神とする道通神社が存在する*7
もしかするとその関係の祠の可能性もある。

地主大神


道通大神の近く祀られるのは大地主大神のお塚だ。
名前からして土地の神だろうか。
古語拾遺』に登場する大地主神との関連は不明*8

毎日稲荷社・広告稲荷社




ここは毎日新聞社明治40年(1907年)に建てた社で、毎日稲荷大神を祀る毎日稲荷社だ。
また、横にあるのは広告稲荷社*9という社で、廣告稻荷大神のお塚が鎮座している。

『大祓御神徳記』には「毎日社」として記載がある*10
伏見稲荷神社御山独案内』では「毎日稲荷社」「広告稲荷社」の名で記載がある*11
また『伏見いなり大社参拝の栞』と『伏見稲荷全境内名所図絵』には「毎日稲荷」として記載がある*12 *13

【玉姫】
御祭神:松尾大神、玉姫大神、毎日稲荷大神など

玉姫の次は豊川エリアへ向かう。
では今回は以上。

脚注

*1:村田卓夫『伏見稲荷大社 大祓御神徳記』(中村風祥堂、2018年)裏面「伏見稲荷山参拝図」

*2:熊鷹社売店掲示「熊鷹社(谺ヶ池)」による。

*3:同書

*4:松岡貞治郎『伏見稲荷神社御山独案内』(1913年)表面

*5:村田、前掲書、裏面「伏見稲荷山参拝図」

*6:松岡、前掲書、表面

*7:岡山県神社庁HP「道通神社」参照。

*8:斎部広成・撰『古語拾遺』(岩波文庫、1985年第1刷)53頁

*9:読みは「ひろつげいなりしゃ」。

*10:村田、前掲書、裏面「伏見稲荷山参拝図」

*11:松岡、前掲書、表面

*12:稲荷山青年団・編『伏見いなり大社参拝の栞』(ヨシミインサツショ、1929〜1939年頃)表面

*13:吉田初三郎・愛信会宣伝部『伏見稲荷全境内名所図絵』(バーザイビュー社、1925年)表面

稲荷山その26:大杉社と杉の木に祀られし神々

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<2022年7月 記事分割に伴い当記事新設>

はじめに

今回は大杉エリアについて。
今までの稲荷山の記事はこちら

マップは以下の通り。
番号が振ってあるのは、お塚の台座の番号だ。
(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)

大杉


大杉エリアは大杉社を中心として、幾つかのお塚が祀られている。
傘杉エリアと同様に、杉の木を御神体としているものが多い。

大杉社



大杉社は杉を御神体とする社で、杉の木の手前に複数のお塚が祀られている。
一番奥のこの社のメインのお塚には大杉大神と磐根大神が祀られている。
大杉大神は建築業の人に崇敬されており、また病気・怪我を回復させる御利益もあるようだ*1
磐根大神の詳細は不明。


大杉大神・磐根大神のお塚の手前には、義徳大明神、髙重大善神、兵妋大神、大芳大明神のお塚が並んでいる。
なお、どの神も詳細不明だ。

白杉大神 外4柱


ここには倉瀧大神・白末大神・白杉大神・弥生大神・杉作大神が祀られている。
お塚は無く、扁額に神名が書かれていて、その後ろに御神体の立派な杉の木が立つ。
なお、白杉大神や杉作大神が杉に因んだ名前ということ以外は詳細不明だ。

杉森稲荷大神・杉芳大神


ここも杉森稲荷大神と杉芳大神の神名が書かれた扁額のみでお塚は無い。
そして御神体の杉の木が立っている。
神名はやはり杉に因んだものになっている。

若杉大神・杉若大神


ここも同様にお塚無し・扁額あり・御神体の杉ありというパターンだ。
御祭神の神名が若杉大神と杉若大神で、1文字目と2文字目を入れ換えただけというのは中々に変わっている気がする*2

小杉大神 外4柱、美杉明神



ここも上で紹介した他の所と同じくお塚無し・扁額あり・御神体の杉ありだ。
祀られているのは杉八大神・中杉大神・小杉大神・常盤大神・福守大神で、杉関連の神名が多い。
1つ変わっているのは、木の手前に美杉明神というお塚も祀られている点だろう。

【大杉】
御祭神:大杉大神、磐根大神、白杉大神など

四ツ辻へ


これで稲荷山の上の方を巡るのは一旦終了し四ツ辻へと戻ってくる。
四ツ辻はやはり見晴らしが良くて最高だ。
ここからは三ツ辻まで行って裏参道に入り、玉姫エリアへと向かう。
今回は以上。

脚注

*1:稲荷山共栄会『稲荷山名所図会・霊峰稲荷山を巡る』(発行年不明 ※2009年以降)裏面

*2:稲荷山の春繁社に祀られる春繁大神と繁春大神の場合と似ている。

稲荷山その25:眼病や投資・商売に御利益がある眼力大神

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<2022年7月 記事分割に伴い当記事新設>

はじめに

今回は眼力エリアについて。
今までの稲荷山の記事はこちら

マップは以下の通り。
番号が振ってあるのは、お塚の台座の番号だ。
(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)

眼力


御膳谷から先へ進むと眼力というエリアになる。
ここは眼力社を中心にお塚が並んでいる。
ここの狐像はとても印象に残るポーズをしていて、口に咥えた筒から水が出ているのが印象的だ。

眼力社




眼力社は眼力大神と石宮大神を祀っている。
茶店に貼られた説明書によれば、眼力大神は眼病・視力回復、証券取引、商売・経営、入試・就職、結婚、願力に御利益があるらしい。
石宮大神については詳細不明だ。

常𠮷大神、松姫大神松鶴大神・白玉大神




ここの塚台には複数のお塚が建てられている。
中央に祀られる常𠮷大神は由緒は不明だが、台座を見る限り「常𠮷講」が存在するほど崇敬されているようだ。
姫大神松鶴大神・白玉大神の方も詳細不明ながら、松鶴大神とはとてもめでたそうな神名なので参拝した。

權光大神・日乃出大神・玉丸大神


眼力亭の横にあるこのお塚には、權光大神・日乃出大神・玉丸大神という3柱の神名が刻まれている。
どれも詳細は不明だが、日乃出大神はお塚では偶に見かける縁起の良さそうな神名だ。

【眼力】
御祭神:眼力大神、石宮大神、日乃出大神など

今回は以上。
次回は大杉エリアについて。

脚注