燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

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錦岡樽前山神社と馬櫪神碑

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苫小牧へ

新千歳空港でおなじみの千歳市の隣の太平洋側に苫小牧市という都市があります。
近年だと『僕だけがいない街』の聖地としても有名でしょうか。
そんな苫小牧に先日行く機会があり、折角なので神社巡りをして来ました。
今回はその中でも、錦岡樽前山神社と馬櫪神碑について書いていきます。
 

錦岡樽前山神社

社殿

鳥居
社殿
錦岡樽前山神社は錦岡駅のすぐ近く、住宅地の真ん中に広い敷地を有しています。
この神社では、円空*1作の樽前権現像*2を御霊代に樽前大権現を祀っているようです。
元々は樽前権現社として、字樽前の樽前山神社と由来を同じくする神社だったようです。
その権現像を祀る社殿が錦岡に遷ったのは1921年とのこと。
現在は正月と例大祭の時だけ公開されているので、私は今回見ることが出来ませんでした。残念。
(参考:市指定有形文化財 錦岡樽前山神社 円空作樽前権現像および奉納品7点(苫小牧市)
 
 
【2019年02月12日 追記】
どこかで『函館市史』に樽前権現社が収録されているというのを見かけたので、図書館に行って調べて来ました。
函館市史 史料編 第二巻』には、菊池重賢の道内の神社に対する大調査の報告書である『壬申八月巡回御用神社取調 第二巻』という函館八幡宮所蔵の文書が収録されています。
「膽振國勇拂郡」の項目の中に「樽前神社」の名称で樽前権現社についての記述があります。
 
それによれば、

○樽前神社 木像 仏躰 改祭
 
観音裏ニたろまゑのたけトアリ年号訳兼。
 
祭神瀬織津姫ト申伝有之候由ノ処、従前当社ハ樽前山神ヲ祭ル趣、瀬織津姫ハ海神祓戸神ニテ山海ノ相違、改祭ノ上ハ祭神判然取調可伺事。

 
※出典:『函館市史 史料編 第二巻』610頁(編集・発行:函館市、1975年)

とあり、元々の御祭神が瀬織津姫*3であったことが分かります。
しかし、「樽前山の山神を祀っているはずなのに瀬織津姫という海神を祀っているのはおかしいので、御祭神を変えろ」との指摘が行われています。
 
これは『機関誌 苫小牧市史編さん No.9』(苫小牧市立中央図書館所蔵)の古老のインタビューの中で

あれは、確かに漁師の護り神様だつたらしいんだね。

※出典:『機関誌 苫小牧市史編さん No.9』41頁(編集・発行:苫小牧市・市史編さん室、1975年)

あれは確かに漁師の神様なんだ。

※出典:同上、42頁

と言われていることにも関連しているかと思われます。
なお、瀬織津姫命がその後どうなったのかは不明です。

 
 
【2019年02月14日 追記】
小牧町大字錦多峰村が1924年*4に発行した『郷𡈽史』(苫小牧市立中央図書館所蔵)の中に、

◎樽前神社  祭神 天照大神 豊受姫神 事代主神

※出典:『郷𡈽史』(編:苫小牧町大字錦多峰村、1924年

とありました。
錦多峰(にしたっぷ)とは錦岡地区の旧称です。
ということは、錦岡の樽前山神社の御祭神が天照大神豊受姫神、事代主神の3柱とされていたこともあったのでしょうか?
これについては他に情報が無かったので、今の所何もかも分かりません。

 
 

地神碑、忠魂碑、錦多峰戦没者の碑

石碑
境内には石碑が3つ並んで置かれています。
向かって左から順に地神碑、忠魂碑、錦多峰戦没者の碑です。
 

地神碑


地神碑
この地神碑は1934年に建立。
地神碑には正面から時計回りに以下の5柱の神々の名前が刻まれています。
・天照皇大神
・少彦命*5
埴山姫命
・倉稲命*6
大己貴命
 

忠魂碑

こちらは1906年建立の忠魂碑です。
1906年ということは、この地区出身の日露戦争戦没者を祀ったものでしょうか。
台座の真正面に6柱の御名が刻まれています。
 
 
【2019年01月30日 追記】
髙橋稔という方が書いた『とまこまいの石碑』(苫小牧市立中央図書館所蔵)という本の209~210頁にこの碑についての説明が書いてありました。
それによると、やはりこの碑は日露戦争における錦多峰地区の戦没者6柱を祀ったものだそうです。

 

錦多峰戦没者の碑

この慰霊碑は比較的新しい1993年に建立されたもので、太平洋戦争で亡くなられた28柱の方々が祀られています(空襲の犠牲者も含まれているそうです)。
(参考:苫小牧空襲の痕跡(Webみんぽう)
碑の表面に28柱の御名があります。
 

その他

謎の賽銭凾
忠魂碑などの後方に謎の建物があります。
注連縄と鈴があり、その下に木の柵で覆われた箱があるだけです。
近付いて見てみると柵の中には御賽銭箱(箱正面には「賽銭凾」と書かれています)。
一体この建物は何なんでしょうか???
 

【錦岡樽前山神社】
住 所:北海道苫小牧市宮前町3-6-20
御祭神:樽前大権現
    または
    瀬織津姫命?*7
    または
    天照大神?、豊受姫神?、事代主神*8
末社等:地神碑(御祭神:天照皇大神、少彦命、埴山姫命、倉稲命、大己貴命
    忠魂碑(御祭神:日露戦争での錦多峰地区の戦没者6柱)
    錦多峰戦没者の碑(御祭神:太平洋戦争での錦多峰地区の戦没者28柱)
創 建:1805年
H P:無し
 

 

馬櫪神碑

馬櫪神碑
錦岡樽前山神社を参拝した後は、近くの錦岡総合福祉会館の駐車場の一角に祀られている馬櫪神碑へ。
この碑は、現在の錦岡地区の辺りで牧場主が1928年に建立したもので、馬の守護神である馬櫪神が祀られています。
現在地には1988年に遷されたようです。
(参考:馬櫪神碑、再来年で90年 馬産地の歴史継承(Webみんぽう)
台座に駆け抜ける馬の姿が彫られており美しいです。
この馬櫪神碑は知っている人も中々多くないかもしれないですね。
僕自身、苫小牧民報の記事を見るまで知りませんでした。
 

【馬櫪神碑】
住 所:北海道苫小牧市青雲町2-12−20 錦岡総合福祉会館駐車場内
御祭神:馬櫪神
末社等:無し
創 建:1928年
H P:無し
 

 
 
今回の更新は以上です。
 

脚注

*1:江戸時代の僧。生涯で12万体の仏像を作ったとされる。

*2:背面には「たろまゑ乃たけ」と刻まれているとのこと。

*3:祓戸大神の一柱。

*4:冒頭文に「二五八四.九調製」とあり、皇紀2584年=西暦1924年発行と思われます。

*5:少彦名命

*6:倉稲魂命

*7:『壬申八月巡回御用神社取調 第二巻』による。

*8:『郷𡈽史』による。