燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

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稲荷山その09:千本鳥居横のマイナースポット・伝法池

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<2022年3月 記事内容改訂>

はじめに

2020年12月は仕事が忙しく記事を書く暇がなかなか無かったため、やっと今年最後の記事を更新。
今回は千本鳥居のすぐ傍なのに全然人が居ない「伝法池」というエリアについて。
 
今までの稲荷山の記事はこちら
 
マップは以下の通り。
(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)

 

伝法池

千本鳥居から


奥社奉拝所から根上り松を越えて熊鷹社へ向かう千本鳥居の途中に、横へ抜ける小道と交差するがある場所がある。
その小道を東へ進むと、伝法池と呼ばれるエリアに出る。
伝法池という地名は、かつてこの本部建物の前(神塚やその周囲の草木が生い茂ってる辺り)に同名の池があったことに由来している。
 
この場所については下記の通り幾つかの資料に描かれている。
まず『伏見稲荷全境内名所図絵』には、この地は「でんぼヶ池」の名前で記されている*1
次に『京都官幣大社伏見稲荷神社 御山明細図絵』によれば、大正11年(1922年)時点ではこの辺りには「御嶽教会」という施設があり、茶店も存在していたらしい*2
また『伏見稲荷神社御山独案内』には、「大八代明神」と「三嶽協会」が並んで描かれている*3
更に『伏見いなり大社参拝の栞』には、この地の建物に「御嶽教天地教会」と書かれているほか、「武村家」という茶店と思しき店も書かれている*4
 
上記の資料に出てくる御嶽教会(御嶽教天地教会)は現在の神道御徳社の辺りにあったか、神道御徳社がその後継なのではないかと思われる。
 
因みに、この地に所縁のある「伝法焼」という料理がある。
この料理は、かつては伝法池の土から作った土器を用いて焼いたためにこの名が付いたという話があるらしい*5
 

神塚



伝法池の入口の鳥居をくぐると多数のお塚が並ぶ神塚が目の前に現れる。
その神塚の横の小道を進んだ先には神道御徳社の本部の建物があり、ここが神塚を管理している。
 

神塚手前にある拝殿には元吉大神・大八代大明神・龍玉大神の3柱の神名がかかれている。
 

伝法池のお塚はこの神塚と呼ばれる大きな土台の上に無数に並んでいる。
一番中央に大きく鎮座したお塚には天照皇日大祖大御神*6という神名が刻まれている。
他のお塚も素盞嗚大御神、稻荷大御神、鴨大神、長者合搥大御神*7など、よく聞く神名から耳慣れない神名まで、とにかく多種多様だ。
 


ところでこの神塚、2020年9月に行った時には立入禁止になっていた。
上部が陥没してしまったらしく、お塚が全て降ろされていた。
 


修復工事は2020年11月に完了したようで、2022年3月現在では無事復旧されている。
 

ところで、神塚の横の別の台座には1つだけお塚が建っている。
こちらは白龍大神・長者大神・末鷹大神の神名が刻まれている。
  

【神塚】
御祭神:天照皇日大祖大御神、素盞嗚大御神、稻荷大御神、鴨大神、長者合搥大御神など
 

 

月日之宮本宮


神塚の左側に隣接して、月日之宮本宮がある。
こちらは神道御徳社とはまた別の教団となっている。
 

月日之宮本宮の第一本宮とも言うべき場所は鴨川に架かる勧進橋の近くにあり、稲荷山にあるのは第二本宮だ。
 

鳥居の先へ進んでいくと、おかげ塚が見えてくる。
たまたま今回行った時は管理されている方がいらっしゃったのでお話を伺うことができた。
曰く、ここでは天照大御神を祀っているのだそうだ。
また参拝の作法も普通の神社とは異なる。
普通の神社では二礼二拍手一礼だが、ここでは三拍手三拍手三拍手の後で鈴を鳴らす際に一礼とのことだ。
 


おかげ塚の近くには菩提塚と供養塚の2つが鎮座している。
これらはどちらも月日之宮関係者の御霊を祀っているとのことだ。
 

【月日之宮本宮】
(おかげ塚)御祭神:天照大御神
(菩提塚、供養塚)御祭神:月日之宮関係者の御霊
 

 
今回は以上。
次回は伝法池の北にある福徳社について。
 

脚注

*1:吉田初三郎・愛信会宣伝部『伏見稲荷全境内名所図絵』(バーザイビュー社、1925年)表面

*2:神谷楢次郎・編『京都官幣大社伏見稲荷神社 御山明細図絵』(カミヤ印刷所、1922年)表面

*3:松岡貞治郎『伏見稲荷神社御山独案内』(1913年)表面

*4:稲荷山青年団・編『伏見いなり大社参拝の栞』(ヨシミインサツショ、1929〜1939年頃)表面

*5:コトバンク伝法」参照。

*6:恐らくは天照大御神のことと思われる。

*7:稲荷山の長者社神蹟(御劔社)には、刀匠・三条宗近が小狐丸を鍛えた際に用いた井戸がある。また、宗近が小狐丸を鍛えた際に、稲荷神が宗近を助けて合槌を打ったとされているのでこれに由来する神名だろう。