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<2022年3月 記事内容改訂>
はじめに
今回は荒神峰というエリアについて。
今までの稲荷山の記事はこちら。
マップは以下の通り。
番号が振ってあるのは、お塚の台座の番号だ。
(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)
荒神峰
田中社神蹟
四ツ辻から伸びる階段の先に荒神峰がある。
田中社神蹟を中心に、周囲を取り囲むように無数のお塚が並ぶ。
田中社は七神蹟の一つとされる。
七神蹟とは、かつて社殿が存在したが後に荒廃して復興されなかった山中の社の跡地で、荒神峰以外では一ノ峰上社神蹟、二ノ峰中社神蹟、間ノ峰荷田社神蹟、三ノ峰下社神蹟、劔石長者社神蹟、御膳谷神蹟がそれに当たる。
七神蹟はそもそも、お塚の信仰が始まった明治時代に七神蹟を定めることで伏見稲荷に無断で行われていたお塚の建立を沈静化させようとして制定されたが、これは逆効果で却ってお塚建立の呼び水になってしまい、結果的に今日のお塚が無数に並び建つ景観が出来上がったということらしい*1。
田中社には権太夫大神という神が祀られているが、由緒書の掲示によると大己貴神(=大国主神)の別名とのこと。
権太夫大神は福の神で、縁組と商売繁昌に御利益があるとされ、芸能関係者の崇敬も篤いようだ。
この荒神峰の田中社が伏見稲荷大社本殿に祀られる田中大神や境外摂社・田中神社とどのような関係にあるのかは調べても分からなかった。
三星大神
参道の階段の売店のすぐそばにあるのが三星大神のお塚だ。
御幸辺にも三ツ星大神が祀られていたが、関連は不明だ。
由緒等も分からない。
三星大神というだけあって神紋も星が3つ円の中に配置されたデザインだ。
出世大明神
この出世大明神は田中社に向かって左側にある(もう1つの出世大明神については後述)。
流石「出世」を関するだけあって小鳥居がかなり奉納されている。
出世は豊かさにも繋がるため、いつの時代も篤い崇敬を集めるのだろう。
なお、お塚には出世大明神と刻まれているが、扁額では出世大神となっている。
藪八大神・ばんざい大神・丸八大神
このお塚は田中社に向かう階段の途中の右手にある。
藪八大神・ばんざい大神・丸八大神という3柱の神名が刻まれているが、特にばんざい大神の名前のインパクトが強烈だ。
ただ、残念ながら詳細は不明。
河内瓢簞山橋姬
これはこの記事でも後述する、稲荷山に点在する「瓢箪山」を冠するお塚の一つだ。
このお塚は、碑自体の形が何だか可愛らしい。
そして表面にうっすらと瓢箪の形が彫られているのも味がある。
因みに、お塚の中にはこの河内瓢簞山橋姬のように神名の「大神」以外の部分だけ書かれているお塚も多数存在する。
なお「大神」が省略されているお塚でも、奉納されている小鳥居等を見ると「大神」まで含めてフルで神名が書かれていることが多い。
千代丸大明神
個人的に荒神峰で一番好きな形のお塚がこの千代丸大明神のお塚だ。
何といっても馬が彫ってあるのが印象的だし、躍動感すらも感じられる。
千代丸大明神という神名についての詳細は不明だが、なにか馬関係の信仰を集めていたのかもしれない。
若、七面大神・清光大神
これも印象に残るお塚だ。
シンプルに若の一文字だけが刻まれている。
恐らくは若大神の意なのだろう。
若のお塚の横には七面大神と清光大神を祀るお塚も鎮座している。
七面大神は、法華経の守護神とされるため日蓮宗寺院の境内の七面宮に祀られることが多い七面大明神のことだろう。
清光大神は詳細不明。
最上位髙松經王大菩薩・白玉
最上位髙松經王大菩薩は、岡山市にある最上稲荷山妙教寺の最上位経王大菩薩のことだろう。
最上稲荷は日本三大稲荷にも数えられる日蓮宗の寺院で*2、天平勝宝4年(752年)の孝謙天皇病気快癒祈願の際に最上位経王大菩薩が降臨したことから始まるとされている*3。
白玉(白玉大神の意だろう)については詳細不明。
米造大神
ここは小さなお塚だが、いかにも稲作を司る稲荷の神にふさわしい神名だと思う。
読みは「こめつくりのおおかみ」で良いのだろうか。
お塚の目の前の狛狐が巻いているスカーフにびっしりと何かが書かれており、よくよく見てみると般若心経だった。
戸川大神・瓢箪山稻荷大神・豊成大神
このお塚は戦術の橋姫と同様に「瓢箪山」を関するお塚だ。
但し橋姫は「瓢箪山」が漢字だったのに対し、こちらは「瓢箪」を絵で表しており、新池堤の記事で紹介した戸川大神と類似している。
瓢箪山で稲荷大神というと、東大阪市の瓢箪山稲荷神社関連かもしれない。
豊成大神については不詳。
猿田彦大神・國狹槌大神
こちらは猿田彦大神と國狹槌大神を祀る。
猿田彦大神は伏見稲荷大社本殿御祭神の佐田彦大神の別名ともされ、瓊瓊杵尊の天孫降臨の際の道案内の神だ。
國狹槌大神は『古事記』『日本書紀』『旧事紀』に登場する神だ。
『古事記』では、国之狭土神が神生みの際に大山津見神と野椎神の子神として登場している*4。
『日本書紀』本文・一書第一・一書第四では、国狭槌尊が天地開闢の際に国常立尊に続き2番目に出現した神とされ*5、一書第二では、国狭槌尊が天地開闢の際に可美葦芽彦舅尊、国常立尊に続き3番目に出現した神とされる*6。
『旧事紀』では、国狭槌尊が神世七代の2代目として豊国主尊と共に出現した国常立尊の別名であるとされるが*7、神生みの際には国之狭土神が大山津見神と野椎神の子神として登場している*8。
豐國社
ここは豐國社とだけ刻まれているお塚だ。
豊国を関するというと、豊臣秀吉を祀る豊国神社関連だろうか。