燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

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稲荷山その29:現状不明な玉姫南

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はじめに

今回は玉姫南というエリアについて。
今までの稲荷山の記事はこちら

この記事は2022年7月に新規で書いたものだが、掲載位置は豊川エリアあらきエリアの間が相応しいと思われるので「稲荷山その29」として書いた。

玉姫南

伏見稲荷大社が昭和41年(1966年)に行ったお塚調査の記録である『続お山のお塚』には「玉姫南」というエリアの記載があり、更に『別冊 お山のお塚 塚台配置図』によれば、14基の塚台が存在していたらしい。
なぜ「らしい」と書いたかといえば、現在では行くのが中々困難なエリアになってしまっているからだ。



毎日稲荷社の横の空地から谷の方を眺めると、彼方にお塚が祀られているのが分かる。
ここが恐らく玉姫南エリアで、熊鷹滝というお滝が存在するらしい(水が涸れているかは不明)。

大正11年(1922年)の『京都官幣大社伏見稲荷神社 御山明細図絵』では、毎日稲荷社・広告稲荷社の近くから伸びる階段が描かれており、突き当たりの滝に「熊鷹の滝」と書かれている*1
大正14年(1925年)の『伏見稲荷全境内名所図絵』では、同じく毎日稲荷社の辺りから下りていく階段とその先に幾つかのお塚がある様子が描かれ、「熊鷹ノ滝」と書かれている*2
更に平成22年(2010年)版の『ゼンリン住宅地図』では、「玉照大御神」(現在の腰神不動神社新社殿の位置)と「腰神不動明王」(旧社殿)の間に階段が描かれており、その先に鳥居と「三徳大神」「天白大神」の神名が記されている*3



このことから、かつては明竹稲荷宮横の封鎖された階段の先から玉姫南に向かうことができたものと思われる。

このエリアに祀られるお塚については、先述の『京都官幣大社伏見稲荷神社 御山明細図絵』では、小富、白玉・白時、金丸、三劔・玉姫・白瀧・末高・福玉、白富・妙白、木ノ本・重多田・光吉、白龍・白光・白木・白雲・雲光、五郎大菩薩・齊神靈地、廣、廣繁、都の塚台11基24柱の神名が挙げられている(各神名は末尾の「大神」を全て省略して記載されている)*4
しかし上記のうち、小富・白時・金丸・三劔・白富・妙白・白木・白雲・雲光・五郎大菩薩・齊神靈地・廣・都の各神名については、『続お山のお塚』には玉姫南エリアのお塚としての記載は無かった。
ただ、この中でも白富と妙白のお塚については『続お山のお塚』には豊川エリアのお塚として記載があったので、他の見当たらないお塚は何処かに遷ったのかもしれない*5

なお、『続お山のお塚』には自分がチェックしただけでも塚台14基102柱の神名が記されている(もちろん目視でチェックしただけなので、漏れはあるかもしれない)。
特に13番塚台は61柱となっていたので一番メインの塚台だったのかもしれない。

またこの玉姫南エリアの神名を見ていくと、大八嶋大神(大八嶋社)、福徳大神(福徳社)、熊鷹大神(熊鷹社)、三徳大神(三徳社)、白菊大神(下社)、伊勢大神荷田社)、青木大神(中社)、末廣大神(上社)、御劔大神(御劔社)、薬力大神(薬力社)、奥村大神(奥村社)、石宮大神(眼力社)、玉姫大神玉姫社)と、割と満遍なく稲荷山中にある社の神名が見えるのが特徴的だ。


Yahoo地図を見ていて気付いたが、もしかすると茨谷の大日本大道教の横の道を進んでいくと熊鷹滝に辿り着けるのかもしれない。
実際、先述の『ゼンリン住宅地図』を見てもその道は記されている*6
また、熊鷹社の茶店の竹屋の裏から行く道も存在はするようだが、おそらく立入禁止ではないかと思う。

【玉姫南】
御祭神:三徳大神など
 

今回は以上。
次回は荒木神社などが鎮座するあらきというエリアについて。

脚注

*1:神谷楢次郎・編『京都官幣大社伏見稲荷神社 御山明細図絵』(カミヤ印刷所、1922年)表面

*2:吉田初三郎・愛信会宣伝部『伏見稲荷全境内名所図絵』(バーザイビュー社、1925年)表面

*3:株式会社ゼンリン『ゼンリン住宅地図 京都府京都市伏見区 2010 11』(2010年)9頁左

*4:神谷、前掲書、表面

*5:伏見稲荷大社社務所『続お山のお塚』(1966年)120, 285頁

*6:ゼンリン、前掲書、9頁左