燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

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都筑中央公園の一角の茅ヶ崎杉山神社(式内社論社)

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はじめに


横浜市営地下鉄センター南駅の北にある都筑中央公園の一角に、茅ヶ崎杉山神社が鎮座している。

茅ヶ崎杉山神社

茅ヶ崎杉山神社



茅ヶ崎杉山神社は少し高い地点にあるので、第一鳥居から社殿の間に階段が伸びている。



茅ヶ崎杉山神社五十猛命主祭神とし、合祀祭神として天照皇大神神明社御祭神)・素戔嗚尊(天王社御祭神)・稲倉魂命(稲荷社御祭神、倉稲魂命)を祀っている。
なお、何故か神奈川県神社庁の神社情報のページでは天照大神のみが御祭神とされている*1



『新編武蔵風土記稿』によると、神社の創建は白鳳3年(674年)の天武天皇の御代に、天日鷲命の22世孫の忌部勝麻呂に神託に基づき高御産巣日太神・天日和志命(天日鷲命)・由布津主命を祀ったことに始まるという。*2
天日鷲命は、『日本書紀』神代上第7段一書第3と『古語拾遺』によると阿波国忌部氏の祖神にして天照大神が天石窟に籠ったの際に木綿(ゆふ、木の皮由来の繊維)を作った神であり、『旧事紀』によると天牟久怒命の孫にして神武天皇の御代に伊勢国造に任じられた神であるという*3*4*5

由緒書を読む限り、明治時代には現在の御祭神である五十猛命が祀られるということになっていたようだ。
また、先述の『新編武蔵風土記稿』には鍵取の北村助之丞の談として、日本武尊を祀るとも伝えている*6

この茅ヶ崎杉山神社前回の記事の大棚・中川杉山神社と同じく延長5年(927年)の『延喜式』に記載のある杉山神社の論社とされている*7

承和5年(838年)には官幣社となり、嘉祥元年(848年)には従五位下が授けられた*8

稲荷神社



社殿の左手には、稲荷神社が鎮座している。
由緒書等はないが、茅ヶ崎杉山神社の御祭神と同じく稲倉魂命を祀るのだろうか。



稲荷神社横には歌碑と御神木旧地碑がある。
もしかするとこの御神木こそが、歌の中で「神の稜威を仰ぐ霊杉」と詠まれた杉の木だったのだろうか。

石祠(詳細不明)



社殿へ続く階段の手前に、かなり風化している石祠らしきものがある。
もしかしたらかつては碑文が刻まれていたのかもしれないが、今となっては読むこともできない。
ただ茶碗やお賽銭は置かれているので、今でもきちんと参拝する人が居るのだろう。

茅ヶ崎杉山神社
住 所:神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央57
御祭神:五十猛命 外3柱
社祠等:稲荷神社
    石祠
創 建:927年以前?
H P:神奈川県神社庁HP「杉山神社」

脚注

*1:神奈川県神社庁HP「杉山神社」参照。

*2:林述斎編『新編武蔵風土記稿 巻之85 都筑郡之5』(内務省地理局、1884年)7頁(国会図書館デジタルコレクションでは68コマ)

*3:坂本太郎家永三郎井上光貞大野晋校注『日本書紀(一)』(岩波文庫、1994年)84頁

*4:斎部広成撰・西宮一民校注『古語拾遺』(岩波文庫、1985年)15, 19頁

*5:溝口駒造訓註『旧事紀』(改造文庫、1943年)243頁

*6:林、前掲書、7頁

*7:藤原時平藤原忠平延喜式 第2』(日本古典全集刊行会、1929年)138頁(国会図書館デジタルコレクションでは74コマ)

*8:林、前掲書、7頁