燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

神社やら、旅行やら、過去の事やら。

ウミネコの島に鎮座する経島神社

山陰山陽記事記事一覧
社寺祠堂巡り記事一覧

<2023年6月 記事内容改訂>

はじめに


前々々回の記事の最後に書いた宗像神社から宇龍漁港へ出ると、右手の方に大きな島があるのが見える。
これが経島(ふみしま)だ。


観光案内の看板によれば、島名の由来は石英角斑岩の柱状節理がまるで積み重ねたお経の巻物のようだったからとのこと*1
経島の島名については文島と表記されたり、或いは鴎島、お経島、日置島などと呼ばれたりするらしい*2*3*4
また冬から初夏にかけてはウミネコの繁殖地として有名で、天然記念物にも指定されている(鴎島の名の由来もウミネコから来ているのだろう)*5

経島神社



島には、日御碕神社の境外摂社である経島神社が鎮座している。
今回は御旅所近くの坂の途中から遥拝した。
御祭神は天照大神・天葺根命・大己貴命の3柱が祀られている*6
天葺根命(あめのふきねのみこと)は日御碕神社神職の小野氏の祖神にして素戔嗚尊の5世孫であり、『日本書紀』神代上第8段一書第4と『旧事紀』では天之葺根神(あまのふきねのかみ)の名で草薙剣天叢雲剣)を高天原に献上する際の使者として登場し、『古事記』では天之冬衣神(あめのふゆきぬのかみ)の名で大国主神大己貴命)の父として登場している*7*8*9*10

経島は日沉宮(神代に天葺根命が天照大神を奉祀したことに始まる日御碕神社下社)の旧鎮座地であり、現在の経島神社は天暦2年(948年)に日沉宮が現在地に遷座して以降に祀られたらしい*11*12

経島は干潮の時には徒歩で行けるほどになるらしいが、島自体が神域であり神事の際に神職が島に渡る他には一切の上陸が許されていない*13*14


……のだが、昭和29年(1954年)発行の『岩波写真文庫』には、男性が子供2人を連れてウミネコが飛び交う経島を歩く写真がバッチリ掲載されてしまっている*15
まあ、ユルい時代だったという事だろう。

【経島神社】
住 所:島根県出雲市大社町日御碕 経島島内
御祭神:天照大神、天葺根命、大己貴命
社祠等:無し
創 建:948年以降
H P:無し

脚注

*1:国幣小社日御碕神社社務所国幣小社日御碕神社御由緒略記』(国幣小社日御碕神社社務所、1945年以前)裏面

*2:同上

*3:出雲市日本遺産推進協議会『出雲日御碕案内 限定復刻版』(出雲市日本遺産推進協議会、2018年)表面

*4:藤本充安編『島根県史要』(川岡清助、1907年)226頁(国会図書館デジタルコレクションでは125コマ)

*5:出雲市日本遺産推進協議会、前掲書、裏面

*6:大社町編集委員会編『大社町史 下巻』(大社町、1995年)433頁

*7:小野尊光『小野家譜』(小野尊光、1875年)2頁(東京大学史料編纂所所蔵史料目録データベースでは4枚目)

*8:坂本太郎家永三郎井上光貞大野晋校注『日本書紀(一)』(岩波文庫、1994年)100頁

*9:溝口駒造訓註『旧事紀』(改造文庫、1943年)77頁

*10:倉野憲司校注『古事記』[改版](岩波文庫、2007年)46頁

*11:国幣小社日御碕神社社務所、前掲書、裏面

*12:大社町編集委員会、前掲書、433頁

*13:著者『観光/カラーガイドシリーズ 18(出雲・長門)』(山田書院、1966年)頁(国会図書館デジタルコレクションでは46コマ)

*14:国幣小社日御碕神社社務所、前掲書、裏面

*15:岩波書店編集部『岩波写真文庫 122 出雲』(岩波書店、1954年)33頁 ※パブリックドメイン