燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

神社やら、旅行やら、過去の事やら。

稲荷山その08:竹取物語ゆかりの地、伏見神宝神社

関西巡り記事一覧
社寺祠堂巡り記事一覧
稲荷山記事一覧記事一覧
 
 
<2022年3月 記事内容改訂>

はじめに

今回は、竹林の中にある伏見神宝神社について。 
今までの稲荷山の記事はこちら
 
今回のマップは以下の通り。
(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)

 

伏見神宝神社

社殿


前回紹介した根上り松のエリアの入口の向かい側に、伏見神宝神社へと続く階段がある。
この階段を上って山道を進むと、伏見神宝神社が見えてくる。
 



拝殿の扁額には「神寳宮」の文字が見える。
伏見神宝神社の御祭神は、主祭神天照大御神と相殿の稲荷大明神だ。
両脇には狛犬ならぬ狛龍が鎮座しており、右が天龍、左が地龍となっている。
 
伏見神宝神社では『旧事紀』において物部氏祖神の饒速日命が天降りをする際に授けられたという*1十種神宝*2を奉安しており、社名もこれに因んでいる。
なお十種神宝は沖津鏡・辺津鏡・八握剣・生玉・足玉・死返玉・道返玉・蛇比礼・蜂比礼・品品物比礼の10種を指す。
 
創建年は不明。
元々は稲荷山上に祀られており皇室の篤い崇敬も受けていたが、後に応仁の乱で荒廃し衰退、昭和32年(1957年)になって現在の伝法岡の地に復興された*3
 

龍頭社



本殿左手の龍頭社の御祭神は龍頭大明神を祀る。
龍頭大明神は別名を山王大権現とも称し、稲荷山の地主神とされる。
ということは、この龍頭大明神は地主神である龍頭太(=荷田龍)の説話とも関連してくるということなのかもしれない。
社務所で頂いた由緒書曰く、西陣織の金具の龍頭にかけて衣の守護神とされているらしい*4
 

霊社


龍頭社の傍には霊社が建っている。
この社は代々の神職篤志の崇敬者の祖霊を祀る*5
 

遥拝所


霊社の右手側に稲荷山遥拝所があり、稲荷山を遥拝することができる。
鳥居の真下には降臨石(タケノコ石)と呼ばれる岩が鎮座している。
遥拝所の竹の鳥居は大変風流で、派手すぎず周りの風景にも実によくマッチしていた。
この風景を見ると竹取物語所縁の地というのも納得できる。
 

なお現在では竹の鳥居だけではなく、立派な朱の鳥居も立っている。
 

八大龍王大神・権太夫大神・白龍大


境内の奥の階段を降りて右側にはお塚も祀られている。
刻まれた神名は右から八大龍王大神・権太夫大神・白龍大神となっている。
 

底津岩戸社


階段を降りた左側には底津岩戸社が鎮座している。
扉の奥の洞窟中に社殿が鎮座しているが、これは天岩戸を模しているのだろう。
御祭神は伏見稲荷大社本殿にも祀られている大宮能女命だ。
大宮能女命は記紀には登場しない神で、『古語拾遺*6*7や『延喜式祝詞*8に登場する。
由緒書によれば伏見神宝神社では天鈿女命と同一神としているが、伊弉冉命と同一神であるという説も存在するらしい*9
 

布留社


本殿右手にあるのは布留社で、御祭神は白菊大神という水神が祀られている。
かつては五条通りにあったが、道路拡張で遷座したとのこと*10
扁額の文字は「正宮■大明神」とある。■が何の漢字か判読できないが「姫」の字だろうか。仮に「正宮姫大明神」だったとして、由来等はよく分からない。
 

その他

おもかる石


布留社の目の前にはおもかる石がある。2つ並んでいるが、どちらもおもかる石ということで良いんだろうか。
右の石はどことなく役行者とかそんな感じにも見えなくもない。
 

愛染碑


霊社の右手には愛染碑がある。
これは伏見神宝神社が竹取物語所縁の地とされているのを受けてのものだろう。
碑文には「古蹟 宇多乃帝・かぐや姫 愛染碑」と刻まれている。
「宇多乃帝」は「うたの帝」、つまり歌を交わした帝の意味であるらしい*11
 

大伴家持


社殿横には大伴家持像が建っている。碑文には以下の2首が刻まれている。
・𠀋夫は名越し立つべし後乃㔺よ聞きつぐ人も語りつぐがね*12
・鶉鳴く古り尓し里より思へども何ぞも妹尓逢ふよしも奈起*13
 

竹乃下道




伏見神宝神社前の道は竹乃下道と呼ばれ、かつては大和の方面に抜けることが出来たという。
両脇は竹林になっていて、何とも趣深い。この道をずっと進んでいくと、弘法滝など稲荷山のお滝が多数点在する方面に行くことが出来る。
 

【伏見神宝神社】
住 所:京都府京都市伏見区深草笹山町15
御祭神:天照大御神稲荷大明神
社祠等:龍頭社(御祭神:龍頭大明神)
    霊社(御祭神:代々の神職篤志の崇敬者の祖霊)
    お塚(御祭神:八大龍王大神、権太夫大神、白龍大神)
    底津岩戸社(御祭神:大宮能女命)
    布留社(御祭神:白菊大神)
創 建:平安時代
H P:無し
  

 
今回は以上。次回は伝法池周辺について。
 

脚注

*1:『旧事紀』(改造文庫、1943年)53頁

*2:読みは「とくさのかんだから」。

*3:京都観光Navi「伏見神宝神社」参照。

*4:伏見神宝神社『伏見神宝神社のご案内』(発行年不明)2頁

*5:同書、2頁

*6:斎部広成・撰『古語拾遺』(岩波文庫、1985年第1刷)22頁

*7:同書、35頁

*8:千田憲・編『祝詞・寿詞』の「大殿祭」(岩波文庫1984年第9刷) 31~32頁

*9:伏見神宝神社、前掲書、3頁

*10:同書、3頁

*11:京都市伏見区HP「深草トレイル 沿道コースの見どころ紹介」参照。

*12:正確には「越」「乃」はこれらを基にした変体仮名で、「を」「の」に相当。「㔺」は「世」の異体字

*13:正確には「尓」「奈」「起」はこれらを基にした変体仮名で、「に」「な」「き」に相当。