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はじめに
今回は劔石(つるぎいし)*1というエリアについて。
今までの稲荷山の記事はこちら。
マップは以下の通り。番号が振ってあるのは、お塚の台座の番号だ。
(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)
劔石
春繁社を後にして道なりに進むと、次は劔石のエリアに出る。
上中下社の神蹟に比べ、森の中にお塚が静かに鎮座している感じの場所だ。
長者社神蹟
御劔社
長者社神蹟とされている場所には御劔社が建っている。
ここに祀られているのは御劔大神こと賀茂玉依姫命。稲荷山に賀茂の神が祀られるのは不思議な感じがするけど、伏見稲荷を創建した秦伊呂具は賀茂建角身命*2後裔である賀茂久治良の末子という伝承*3もあるから、その辺りの関係なのかもれしない。
劔石(雷石)
社殿の後ろには大岩がある。茶店に貼ってある由緒書によれば、名を劔石といい、また別名を雷石というらしい。異形の僧が雷を岩に縛りつけたという伝説があるんだとか。
焼刃の水(宗近の井戸)
また御劔社の横には、「焼刃の水」がある。ここは刀工の三条宗近が小狐丸の焼刃の際に、ここの霊水を用いたことに由来する。そのため、「宗近の井戸」とも呼ばれるらしい。
折角なので刀剣好きな人は行ってみたらどうか。
三劔家
劔石の茶店は三劔家という名前だ。ここでは「いっぷくセット」という、煎茶・煎餅・玉露羊羹がセットになったメニューを頂いた。
最初にここを通りかかった時、店から野球中継が流れているのが聞こえた。それでふと、北尾鐐之助という新聞記者で作家の人が書いた、『京都散歩』という本の内容が頭をよぎった。
一ノ峯の上ノ社から、再び四ツ辻の方へ下りて行くと、茶店のラヂオが、しきりに野球の放送をしていた。婆さんが一人いるのみで、誰れもいない茶店にやすんで、……お婆さんは野球が分かるのか……と聞いてみると、……私は何も分らぬが、ラヂオを出して置くと、よくお客さんがやすんでくりゃはります……とこたえた。
……ピッチャ第四球、なげました。遠い球、ボール!、カウントはワン、スリー……
ラヂオの声はお山の石塚につき当って、朗々と谷底から聞える「般若心経」に響いて行った。
北尾鐐之助『近畿景観 第三編 京都散歩』(蘭書房、1954年)363頁
上記の文章に似た情景だった(流石に谷底から般若心経は聞こえなかったけど)ので、この本が書かれた昭和の頃と令和の今がまるで重なり合ったような、なんとも不思議な気分になった。
方除大神ほか六柱と白長大神ほか五柱
方除大神・島龍大神・末廣大神・御嶽大神・熊鷹大神・白龍大神・髙丸大神
このお塚は七柱と、結構多くの神名が刻まれている(後述するお塚に比べれば少ないけど)。
方除大神とは聞き慣れない神名だけど、方位神を祀っているのだろうか。
島龍大神というのも聞き慣れない。
末廣大神と熊鷹大神は、上社と熊鷹社にそれぞれ祀られている。
御嶽大神は、御嶽教*4関連だったりするんだろうか。
藥水力大神ほか十四柱
最後に紹介するのはこのお塚。見ての通り、十五柱もの神名が刻まれている。
見づらいので図にすると、上記のような感じになる。
藥水力、藥食力、頭痛力、長寿延命、安産力、萬病力など、健康などに関する神名が多いのが特徴的だ。
また開運期米大神は、「期米」が米の取引関係の単語らしいので、そういった関連の願いを込めた神名なのだろう。
さて、そんな神名の中でも一番インパクトがあるのはこの「陸海軍力大神」だろう。なんたって陸海軍だ。このお塚の建立年は分からないけど、まあ恐らく戦前から建っているんだと思う(戦後だったら空軍も追加されてそうだ)。
今回は以上。次回は薬力・傘杉・春日峠の3エリアについて。