燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

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宇治拾遺物語にも登場する松原道祖神社

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はじめに


新玉津島神社から松原通を200mほど西へ進むと、新町通と交差するあたりに松原道祖神社が鎮座している。

松原道祖神



松原道祖神社の御祭神は猿田彦命と天鈿女命の夫婦神だ。
掲示によれば、御利益は旅行守護・厄災除け・夫婦円満・縁結び・商売繁盛などであるらしい。
かつては五条道祖神と呼ばれたようだが、これは現在の松原通平安時代には五条大路であったことに由来する。

創建は平安時代に遡るという。
古くから祀られていただけあって、鎌倉時代前期頃成立の『宇治拾遺物語』に「道命於和泉式部許読経五条道祖神聴聞事」という話が収録されている*1
これは「大納言・藤原道綱の息子である道命阿闍梨和泉式部と寝た後、目が覚めたので読経した。読経が終わった頃にふと気が付くと、誰かがその様子を見ていた。誰か尋ねたところ、それは翁の姿をした五条道祖神であった。実はこの日は道命阿闍梨が身を清めず読経したため、普段読経を聴きに来ている梵天帝釈天等の高位の神々が来ず、それにより低位の五条道祖神が近くで読経を聴くことができた」という伝説だ。

その後もずっと祀られていたようだが、明治17年1884年)には町会でもう祀れないということで南不動堂町の道祖神社遷座し、この松原道祖神社は廃社になってしまったらしい*2
ただこの際に遷座はしたものの社は残っており、その後も神社あった土地を持つ住民が祀り続けたため、現在も松原道祖神社が残っているということのようだ*3

また戦前に神社の土地を持つ住民が遷座しようとしたところ夢の中でお告げががあり、「今は時ではないからその時を待て」との内容だったため待っていると、ちょうど先の大戦で強制疎開となったと伝わっている*4

【松原道祖神社】
住 所:京都府京都市下京区藪下町34付近
御祭神:猿田彦命、天鈿女命
社祠等:無し
創 建:平安時代
H P:京都観光Navi「松原道祖神社」

脚注

*1:宇治拾遺物語 上巻』(岩波文庫、1951年)19頁

*2:田中緑紅『京のお宮めぐり その一』(緑紅叢書、1958年)48頁

*3:同書

*4:京都新聞社編『京都・伝説散歩』[再版](河出文庫、1994年)34頁