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<2022年7月 記事内容改訂>
はじめに
今回は豊川というエリアについて。
今までの稲荷山の記事はこちら。
マップは以下の通り。
番号が振ってあるのは、お塚の台座の番号だ。
(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)
豊川
豊川と呼ばれるこのエリアは、明竹稲荷宮や伏見豊川稲荷本宮を中心に多くのお塚が並んでいる。
なおこのエリアには猫が生息しているので、其処彼処でその姿を見ることができる。
明竹稲荷宮・腰神不動神社・玉照社
このエリアで一番手前には、明治時代初期に創建された明竹稲荷宮*1が鎮座している。
ここの末社には、腰神不動神社と玉照社がある。
現在は明竹稲荷宮と玉照社が建替中のため、腰神不動明神社の新社殿を権殿*2として遷座している。
明竹稲荷宮の御祭神は、社務所で尋ねたところによると稲荷大神・天照大御神・素戔嗚尊など数柱であるとのこと。
腰神不動神社の御祭神についても尋ねたところ、主祭神である腰神不動明王と眷属の矜羯羅童子と制多迦童子も祀るそうだ。
玉照社の御祭神は、玉照大御神・玉𠮷大御神・玉秀大御神・宗藤大明神・辰富大明神・大𠮷大明神の6柱であるようだ(後述)。
腰神不動神社の新社殿横には封鎖された階段があり、そこを降りて右側には旧社殿が残っている。
また、封鎖してある板には遷座した旨が掲示されている。
なお、この階段の先がかつては玉姫南エリアに通じる道であったと思われる。
なお自分は2016年(平成28年)に稲荷山に行った時に、当時の腰神不動神社と玉照社に参拝している。
腰神不動神社は真っ赤な社殿が印象的だ。
玉照社はこの時も権殿だったらしく、傍には権殿の表記と共に玉照大御神外5柱の神名が書かれている。
一本葉大神 外お塚多数
稲荷山北向不動明王尊の横の通路には一本葉大神をはじめとして多数のお塚が祀られている。
ただ、参拝した2016年当時は近付くことが出来ず、北向不動明王の横から遥拝するような形になっていた。
ところが2022年(令和4年)2月に参拝すると事態は大きく異なっていた。
老朽化が激しくなってきたため、どうやら近いうちに撤去になってしまうらしい。
一体、この後どの様になっていくのだろうか……。
七福神 外お塚多数
境内には、七福神等を祀る塚台と、天宇受売命等を祀る塚台が並んでいる。
七福神 外お塚4基
この塚台には大龍辨戝天、七福神、末永大明神、於常大明神、熊ヶ谷大明神の5つのお塚が並んでいる。
大龍辨戝天はその名の通り弁財天だろう。
七福神は一般的には大黒天・恵比寿神・毘沙門天・布袋尊・福禄寿・寿老人・弁財天の7柱を指し、福の神として知らない人は居ない。
それ以外の神名については詳細不明だ。
また、お塚の手前には色々な七福神の置物が置かれていて楽しい。
因みに2019年(平成31年)に行った時は、七福神の置物ではなく代わりに黒猫が鎮座していた。
天宇受売命 外お塚4基
この塚台には芸能の神である天宇受売命をはじめとして、熊ヶ谷大明神、豊岩大神、末𠮷大明神、豊國大明神のお塚が並んでいる。
天宇受売命は、岩戸開きの際に舞い踊っていた神だ。
それ以外の神名は詳細不明。
正𠮷大神
七福神の塚台の左側に切り株があり、その根本に正𠮷大神のお塚が祀られている。
残念ながら由緒等は不明だ。
伏見豊川稲荷本宮
ここは伏見豊川稲荷本宮という社が鎮座している。
豊川というエリア名はここから取られたものと思われる。
社の中に豐川大神の巨大なお塚が社の中に鎮座している。
御祭神は日本三大稲荷にも数えられる愛知県豊川市の円福山妙厳寺(豊川稲荷)に鎮守として祀られる豊川吒枳尼真天なのだろう。
お塚の後ろにはステンドグラスがあり、とても美しい。
この社は大正〜昭和の頃には既にそれなりの規模で存在していたらしく、1913年(大正2年)発行の『伏見稲荷神社御山独案内』では「豊川明神」*3、1922年(大正11年)発行の『京都官幣大社伏見稲荷神社 御山明細図絵』には「豊川社」*4、1925年(大正14年)発行の『伏見稲荷全境内名所図絵』では「豊川社」*5と記されている。
また、収録されている稲荷山参拝図が大正〜昭和のものと思われる『伏見稲荷大社 大祓御神徳記』でも、「豊川社」の表記を見ることができる*6。
白龍大神、黒龍大神、白狐神霊
伏見豊川稲荷本宮の横には、変わったデザインのお塚が3つ並んで建っている。
白狐神霊はその名の通り狐を祀ったものと思われ、お塚本体には4匹の狐が彫られており、またお塚の前にも6体の狛狐が置かれている。
黒龍大神は玉を咥えた龍の像で、かなり綺麗な作りなのでもしかすると比較的新しいのかもしれない。
白龍大神は黒龍大神より大きい玉を持った龍の像で、年季の入った感じがかえって迫力がある。
運動大神・御雪大明神
ここは運動大神と御雪大明神を祀ったお塚だ。
運動大神はその名の通りスポーツの神様であるようで、子供達のサッカー上達祈願を書いた木札が幾つか奉納されていた。
御雪大明神は詳細不明。
脳天大神 外お塚多数
眼力大神・おせき大神
手前左に鎮座するのは眼力大神とおせき大神を祀るお塚だ。
眼力大神は眼力社に祀られる神で、眼病・証券取引・商売などに御利益があるとされている。
おせき大神はおせき社に祀られる神で、咳止めや喉を使う仕事に御利益があるとされている。
大学大神は学問の神であるらしく、合格祈願の絵馬が多数奉納されている。
脳天大神はもしかすると奈良県吉野町の修験本宗総本山・国軸山金峯山寺の塔頭・龍王院に祀られる脳天大神のことかもしれない。
この龍王院の脳天大神は、金峯山寺初代管長の五條覚澄大僧正が頭を割られた蛇を弔ったところ、その蛇は蔵王権現の化身であり頭の守護神として祀られたという由緒がある*7。
稲荷大神 外お塚5基
この塚台には白髭大神、最上位經王大菩薩、稲荷大神、三州豐川陀枳尼天、大和宇陀朝日大神の5柱と願望成就稲荷を祀られている。
掲示を見る限り、5柱はセットであるらしい。
白髭大神は猿田彦大神、すなわち伏見稲荷大社本殿に祀られる佐田彦大神の別名とされる。
最上位經王大菩薩は、日本三大稲荷に数えられる岡山県岡山市の最上稲荷山妙教寺の御本尊だ。
稲荷大神は、言うまでもなく伏見稲荷大社本殿の御祭神で、特大のお塚が特徴的だ。
三州豐川陀枳尼天は、三州が三河国のことなので、先述した豊川稲荷の豊川吒枳尼真天のことだろう。
大和宇陀朝日大神は詳細不明だが、検索してみると奈良県宇陀市に朝日大神の社があるらしいので、そこの神様かもしれない。
また、上記の5つのお塚の手前に願望成就稲荷が祀られている。
ところでこの位置にある社については、先述の『伏見稲荷神社御山独案内』では法華稲荷社*8、『伏見稲荷大社 大祓御神徳記』では五社繁昌社*9と書かれているが、このお塚との関連は不明だ。
月姬大神 外14柱
ここは合計15柱にも及ぶ神名が刻まれたお塚だ。
右上から月姬大神・楠珺大神・白龍大神・金倉大神・三春大神・白萩大神・豊光大神・ひとまき大神・楠長大神・八大龍王・鞍馬魔王・不動明王・與樂大神・末廣大神・白髭大神となっている。
月姬大神は詳細不明だが、もしかすると竹取物語の関連だろうか。
白龍大神と八大龍王はその名の通り龍神だろう。
豊光大神も詳細不明だが、この神名は東丸神社裏手の路地に鎮座するお塚にも刻まれていた。
鞍馬魔王は御幸辺下や二ノ峰で「鞍馬大僧正」の名で祀られていたのと同じく鞍馬天狗、恐らく鞍馬寺に祀られる護法魔王尊だろう。
不動明王は稲荷山でもお滝などでもよく祀られる、仏法守護の明王だ。
末廣大神は一ノ峰上社神蹟の御祭神で、大宮能売大神のこととされている。
白髭大神は先述の通り猿田彦大神のことだ。
それ以外の神名は全く詳細が分からない。
縁結大神 外お塚多数
ここには縁結大神をはじめ多数の神仏が祀られている。
看板には「縁結び 足腰不動 身代り不動 十二支守本尊」と書かれている。
縁結大神
ここには稲荷山でもここにしか祀られていないと思われる縁結大神が祀られている。
名前からしていかにも縁結びの御利益がありそうな神様だ。
ここには良縁祈願の木札が多数奉納されている。
成田不動明王 外お塚多数
この塚台には立派なお塚が15基以上並んでいる。
特徴としては、日本各地の寺社関連と思われるお塚が多いことだ。
宮地嶽三柱大神 外2柱
末廣大神は先述の通り一ノ峰上社神蹟の御祭神だ。
宮地嶽三柱大神は、福岡県福津市の宮地嶽神社に祀られる息長足比売命・勝村大神・勝頼大神の3柱のことではないかと思われる*10。
一之瀧大神は詳細不明だ。
髙鶴大神 外お塚2基
弘法大師・權𠮷大神
このお塚には弘法大師と權𠮷大神が祀られている。
弘法大師は先述の通り。
權𠮷大神については詳細不明だが、「權」の「口口」の部分が「ツ」と略されているのが味わい深い。
【明竹稲荷宮】
住 所:京都府京都市伏見区深草開土口町16
御祭神:稲荷大神、天照大御神、素戔嗚尊 外数柱
境内社:腰神不動神社、玉照社など
建 立:明治初期
H P:無し
【伏見豊川稲荷本宮】
住 所:京都府京都市伏見区深草開土口町15
御祭神:豐川大神
境内社:お塚多数
建 立:不明
H P:無し
【豊川】
御祭神:七福神、月姬大神、縁結大神など
次回は、かつてはこのエリアから行けたはずの玉姫南というエリアについて。
今回は以上。