燈蓮寺伽藍堂 -RISING FALCON-

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稲荷山その13:御幸奉拝所と横山大観筆塚

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<2022年3月 記事分割に伴い当記事新設>

はじめに

今回は御幸奉拝所のある御幸辺(上)というエリアについて。
 
今までの稲荷山の記事はこちら
 
マップは以下の通り。(※画像が粗い場合は、クリックした先で「オリジナルサイズを表示」を選ぶと大きいサイズが表示される。)

 

御幸辺(上)

四ツ辻から地蔵堂


四ツ辻から荒神峰へ続く階段の途中から、御幸奉拝所のある御幸辺(上)エリアへ向かう道があるので進んでいく。
なお御幸奉拝所への道は、先述の四ツ辻からの道だけでなく、荒神峰田中社の後方の奥へと続く道からも合流することができる。
 

冒頭のマップにも示した通り、この道の合流地点からは白滝方面への長い階段の道も伸びている。
 

また、白滝に向かう道の手前には、地蔵堂が祀られている。
 

また、地蔵堂の横に祀られているのは赤い布でよく見えないが地蔵尊か双体道祖神だろうか。
 

御幸奉拝所


地蔵堂から更に先に進むと御幸奉拝所に到着する。
御幸奉拝所は昭和38年(1963年)に鎮座1250年記念として開かれた比較的新しい場所だ。*1
この御幸奉拝所の中心には親塚が鎮座しており、ここに参拝することで稲荷山を遥拝できる。
なお現在の御幸奉拝所は、伏見稲荷大社が行ったお塚調査の記録である『お山のお塚』が刊行された昭和40年(1965年)当時よりも区画が拡張されてお塚の数が増えているので、同書には未掲載のものも多数ある。
 

清玉大神


御幸奉拝所に入ってすぐの所には清玉大神が祀られている。
 

このお塚の前には御神体の由緒が書かれた石碑が建っている。
曰く、「如意宝珠」なるものが御神体であり、お塚を建てた人の家の家宝として300年間受け継がれてきたらしい。
 

白菊大神 外48柱


清玉大神の隣のお塚には49柱の神名が祀られている。
 

これが神名一覧だ。
以下、目についた神名について書いていく。
 
白菊大神・末廣大神・青木大神はそれぞれ三ノ峰一ノ峰二ノ峰に祀られる神々だ。
稲荷五社大神は伏見稲荷大社本殿に祀られる5柱のことだろう。
八双一力弁戝天という弁財天も詳細不明ながらも祀られている。
八大龍王は仏法を守護し、雨を司る龍神だ。
猿田彦大神は本殿に祀られる佐田彦大神と同じ神だとされる。
髙倉大神は、関係は不明だが御膳谷に高倉社があり、そこでも祀られている。
東丸大神は本殿横の東丸神社御祭神の荷田東丸のことと思われる。
大岩大神は稲荷山南谷に祀られる神だ。
御劔大神は御劔社の御祭神で賀茂玉依姫命であるともいう。
石宮大神は眼力社に眼力大神と共に祀られている。
白髭大神は猿田彦大神すなわち伏見稲荷大社本殿御祭神の佐田彦大神の別名ともされており、御壷滝にも白鬚社*2が存在する。
三剱大神も御劔社の御劔大神を示していると思われる。
太夫大神は荒神峰の田中社の御祭神だ。
福徳大神は伝法池の北の福徳社に祀られる神だ。
豊川大神は豊川稲荷に祀られる吒枳尼天で、稲荷山にも伏見豊川稲荷本宮が鎮座している。
荒木大神荒木神社の御祭神として祀られている。
奥村大神は御膳谷の旧蹟に奥村社があり、そこに祀られている。
 
こうして見てみると、このお塚には稲荷山各所に祀られている神名が多く刻まれている。
上で言及しなかった神名も、稲荷山のどこかに祀られているのだろう。
 

正一位畑守稲荷大神


49柱のお塚の隣は正一位畑守稲荷大神のお塚だ。
とても綺麗に管理が行き届いているのが分かる。
きちんと狛狐も両脇に控えていて可愛らしい。
 

玉受稲荷大神


清玉大神から親塚の拝殿を挟んで向かい側には、玉受稲荷大神のお塚が建っている。
灯籠の柱の文字から、神理教*3のお塚であることが分かる。
 

末廣稲荷大神


玉受稲荷の隣は末廣稲荷大神のお塚だ。
末廣の名は一ノ峰に祀られる末廣大神に由来するものと思われる。
 

稲荷大神・熊義大神、白瀧大神、白常比賣之霊


末廣稲荷の隣の区画は、中央にメインの稲荷大神と熊義大神を祀るお塚が鎮座している。
 


手前には白瀧大神のお塚と白常比賣之霊のお塚が建っている。
白瀧大神は御幸奉拝所近くの白滝に関連する神だろうか。
白常比賣については詳細不明。
 

飯島稲荷大明神・能勢稲荷大明神・出世稲荷大明神


稲荷大神の隣は飯島稲荷大明神のお塚となっている。
飯島稲荷大明神は詳細不明。
能勢稲荷大明神も詳細不明だが、大阪府能勢町と何か関係があるのだろうか。
出世稲荷大明神と由緒などは不明だが、「出世稲荷」という名称は割とスタンダードな印象がある。
 

大山祇命・三島大神


飯島稲荷の隣は大山祇命と三島大神を祀る。
大山祇命伏見稲荷大社本殿に祀られる宇迦之御魂大神の祖父神で、その名の通り山を司る神だ。
三島大神は三島大社の御祭神の三島大明神のことだろうか*4
 

土田稲荷大神・美久仙稲荷大神・阿止羅須稲荷大神


大山祇命の隣は土田稲荷大神・美久仙稲荷大神・阿止羅須稲荷大神の3柱が祀られている。
土田稲荷大神は詳細不明。
美久仙稲荷大神は鳥居を奉納しているのが株式会社ビクセンという会社のようなので、「美久仙」も「びくせん」と読むものと思われる。
阿止羅須稲荷大神は前述の株式会社ビクセンのHPを見てみると、関連会社にアトラス光学株式会社があったらしいので、もしかすると「阿止羅須」の読みは「あとらす」だろうか*5
 

稲荷五柱大明神



御幸奉拝所の親塚などがない側の中程に、稲荷五柱大明神のお塚が鎮座している。
由緒書の碑文曰く、平良将*6後裔を称する相馬彦八正信*7稲荷大神を祀り、正信後裔の神成氏が代々受け継いできたとのことだ。
 

横山大観筆塚


御幸奉拝所の一角には、なんと日本画の巨匠・横山大観の筆塚がある。
これは大観が伏見稲荷への崇敬が深かった縁で、この場所に筆塚が建ったらしい*8
 

【御幸辺(上)】
御祭神:清玉大神、正一位畑守稲荷大神、稲荷五柱大明神など
 

 
次回は荒神峰の田中社神蹟。
今回は以上。
 

脚注

*1:伏見稲荷大社附属講務本庁『神奈備 稲荷山巡拝』(2018年)60頁

*2:「鬚」は「髭」の異体字

*3:神道十三派の1つで、明治時代に饒速日命後裔とされる佐野経彦が創始。

*4:なお、三島大社御祭神は大山祇命積羽八重事代主神で、2柱の総称が三島大明神となっている。

*5:株式会社ビクセンHP「沿革」参照。

*6:桓武平氏の祖・平高望の子で平将門の父。碑文には平治の乱(1159〜1160年)や応仁の乱(1467〜1477年)の文字が見えるが、良将は平安時代前期の人物なのでよく分からない。

*7:由緒書によると宝暦7年(1757年)没なので、江戸時代中期の人物か。

*8:伏見稲荷大社附属講務本庁、前掲書、60頁